厳選怖い話
ワンピースの女とBAR

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あれは俺が社会人になりたての頃だからもう8年も前の話だ。
俺の趣味は隠れ家的なBARを探すこと。休日は落ち着く店を
探して最寄り駅周辺を歩き回る。今日はたまたま見つけて入っ
たBARでの恐怖体験を書いてみる。

某ゲーム会社にプランナーとして入社出来た俺は毎晩遅くまで
企画制作に没頭していた。休日も頭の中は企画のことばかり。
いつもノートPCを持ち歩き、面白いアイデアを見つけると即
入力していた。

その日、俺はいつものように駅前のファミレスで夕飯を済ませ
ると、いつものようにブラブラと歩き始めた。ちょうど日が暮
れきる寸前で夜の街灯が眩しく光る。ガード下の喫煙所で一服。
土曜の晩ということもあってか、街は若者でごった返している。
煙草を吸いながらしばらくボーッと夜の街を眺める。と、一人
の女性に目が行った。
季節は初夏。半袖の白いワンピースに白いサンダル。長い黒髪
で駅から繁華街に向かってゆく。パッと見、清楚な美人という
感じで、なんとなく興味を持った俺は煙草の火を消すと、彼女
がどこに向かうのか気になり同じ方向に向かって歩き始めた。

彼女はゆっくりと歩いていたようだったが、なかなか追いつけ
ない。人ごみの中を彼女を見失わないようについて歩く。段々
と裏通りのほうへ向かって進んで行った。と、一件のBARに
入っていくのが見えた。

415 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:17:40 ID:5P0FeC7b0
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そこは雑居ビル。彼女が入っていった店は地下1階の店のようだ。
俺は「ふ~ん、こんな所にBARがあったんだ」と辺りを軽く
見回し中へ入っていった。店には看板が出ていない。俺はこう
いった店が好きでwktkしてきた。重い扉を引き店の中に入る。

暗めの照明にシックな落ち着いたデザインの内装。静かに流れ
ているスタンダードJAZZ。初老のバーテンダー。どれを取
っても俺の琴線に響く感じだった。「これはいい店を見つけた」
と俺は喜んだ。目を輝かせて店内を見回しながら俺は気づいた。

あれ? そういえばさっきの女性がいないな。

オーダーを聞かれたのでジントニックを注文。ワンピースの女性
は違う店に入ったのかな?と思い、深く考えなかった。お酒が入
り気分がよくなった俺はノートPCを出し新規案件用のシナリオ
を書き始めた。驚くほど良いアイデアがバンバン出てくる。

俺は「そうだ、大人向けの推理小説的なゲーム企画を書いてみよ
う」と思い、主人公が通うBARでの出来事や事件を通して謎を
解いていく内容にすることに決めた。BARのモデルはこの店に
することにした。

しばらくの間、俺はこの店に通った。

416 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:18:49 ID:5P0FeC7b0
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シナリオは進んだ。もともと文章いじりが好きだった俺は、この
企画に夢中になった。週末、彼女がうちに遊びに来た。仕事が忙
しかったので会うのは3週間ぶりだ。と、開口一番、彼女が言っ
た。「あれ?顔色悪くない?目の下にクマが出来てるよ?」

え?何言ってんだ? と俺は思ったが鏡を見てみた。確かにクマ
のようなものがあったが特に疲労は感じない。俺は仕事が忙しか
ったからかな、などと言いそのことについてはそれで終わった。
彼女はまだ大学生。久しぶりということもあってかお互い色んな
話をした。

あ、そういえばいい店見つけたんだ。

俺は例のBARの話をした。彼女が行ってみたいというので夕飯
後、連れて行くことにした。駅ビルのレストランで夕飯を済ませ
ると、腹ごなしにゲーセンで遊んだ。彼女はUFOキャッチャー
で縫いぐるみを取ってくれとせがむので頑張ってみた。取れなか
ったorz (ちなみにこの子は以前書いた伊豆事件を一緒に遭遇した
彼女だ)

小1時間ほど遊びBARへ向かうべく、ゲーセンから出て駅前の高
架に出た時、視界に何かが入ったことに気がついた。

あの時の白いワンピースの女だ。

417 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:27:20 ID:5P0FeC7b0
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俺は何故かまたあの女が例のBARへ向かうと確信した。俺が何か
を見ていることに気づいた彼女は「また可愛い子にでも見とれてる
のぉ~?」と冷やかしてきたが、俺は今日こそあの女の行き先を確
かめようと、彼女の手を引き足早に女の後を追った。

しかし途中で彼女が気持ち悪くなってきた、と言う。急いで歩いた
からか?俺は路肩でしゃがみこむ彼女を介抱しながら、完全にワン
ピースの女を見失ってしまっていた。しばらくしたが彼女の具合が
戻らないのでタクシーを拾い、自宅へ帰った。

彼女はしきりにごめんねと謝っていたが、俺は気にせず休んでいろ
と言い、氷を買いに部屋を出て近所のコンビニに向かった。レジで
支払いを済ませている最中、ふと店の外を見て俺は固まった。あの
女が店の外を通り過ぎたのだ。あのワンピースの女が。

えっ!? あの女なんでここにいるんだ??

俺は急いで買ったものを持って店外へ出たが、すでにあの女の姿は
見えなかった。と、俺は急に部屋に残してきた彼女が心配になり、
猛ダッシュで部屋に戻った。駅から俺の自宅までは歩いても30分は
かかる。あの女は確かにBARの方向に歩いて行った。俺の自宅と
は真逆の方向だ。俺は猛烈に嫌な予感がした。

部屋に戻ると彼女の姿がなかった。

419 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:30:13 ID:5P0FeC7b0
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え、どこに行ったんだ?部屋中探したが見つからない。と、そこに
携帯が鳴った。彼女からだった。近くの路地にいるから迎えにきて
と言う。おおよその場所を聞き、即効で向かった。いた。彼女が道
にうずくまっている。俺は抱きかかえ部屋へと連れて行き寝かせた。

俺はどうしてあんな所にいたのか、ワケを聞くと彼女は話し始めた。
俺がコンビニに向かった後、何ともいえない嫌な感じ?がどんどん
近づいてくるのを感じたそうだ。このままでは危ないと思い部屋を
出たと言う。部屋を出た後は彼女を追ってはこなかったので、あそ
こで俺に連絡したらしい。

じつは彼女もある程度、あっち側の事がわかる人だ。但しあくまで
感じるといったレベルだが。彼女曰く、その嫌な感じは俺を狙って
いるわけでもなさそうだと言う。では一体。。。俺はその晩、彼女
を介抱しつつ考えた。

あのワンピースの女はあっち側の人なのか?それならBARで消え
たのも合点がいく。しかし何で俺に付きまとう?あのBARに行っ
たからか?ただの客なのに。。俺は色々と考えたが納得のいく回答
は得られなかった。

翌日、彼女はすっかり元気になり自宅へ帰っていった。彼女は帰り
際に「俺君が言ってたBARには行かないほうがいいみたいだよ」
と言っていた。彼女も何かを感じているらしい。俺は確かにそうか
も知れないと思ったが、折角見つけたお気に入りの店を失いたくな
いという気持ちと、あのワンピースの女の謎をどうしても知りたか
った。

その晩、気がつくと俺はあのBARの前に立っていた。

420 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:31:53 ID:5P0FeC7b0
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すでに日が暮れて真っ暗だ。辺りは人影もなく夏なのに妙にひんや
りとした空気が流れている。いつものように重い扉を引き、店の中
へ入った。と、わが目を疑った。いたのだ。あの女が。カウンター
の1番奥に座っているじゃぁないか。

やっぱり人間だったのか。。。

俺は安心するといつものようにジントニックを頼んだ。きっと自宅
の近くで見たのは別人だったのだろう。俺はそう思い、ノートPC
を開け、今までの出来事を整理した。ついでだからあのワンピース
の女も今回の企画に盛り込もうと、シナリオに追加した。うん、我
ながら面白い作品に仕上がりつつあるぞ。

すっかりご機嫌になった俺はそのまま一気にシナリオを書き上げた。

ふと時計を見ると深夜2時近くなっていた。俺はヤバイ、そろそろ
帰らなきゃ明日の仕事に影響が出ちまう、と思い支払いを済ませた。
ふと目線をカウンターの奥に向けると、あのワンピースの女はまだ
そこにいた。連れもおらず、ずっとひとりで飲んでいたのか?

この時、初めて初老のバーテンダーが自分から口を開いた。

「・・・明日はいらっしゃいますか?」

え?明日?う~ん明日は月曜で忙しいからちょっと無理かな。と言
うとそのバーテンダーは無言で背中を向け、酒瓶を拭き始めた。俺
は何か変だな、と思いながらも時間も遅いしその晩はそのまま店を
後にした。

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