師匠シリーズ
降霊実験

この怖い話は約 7 分で読めます。

27 名前:降霊実験  1/9 投稿日:03/05/10 00:13
大学一年目のGWごろから僕はあるネット上のフォーラムによく顔を出していた。
地元のオカルト好きが集まる所で、深夜でも常に人がいて結構盛況だった。
梅雨も半ばというころにそこで「降霊実験」をしようという話が持ち上がった。
常連の人たちはもう何度かやっているそうで、オフでの交流もあるらしかった。
オカルトにはまりつつあった僕はなんとか仲間に入りたくて
「入れて入れて。いつでもフリー。超ひま」とアピールしまくってokがでた。
中心になっていたkokoさんという女性が彼女曰く霊媒体質なのだそうで、彼女が仲間を集めて降霊オフをよくやっていたそうである。

日にちが決まったが、都合がつく人が少なくてkoko みかっち 京介 僕
というメンバーになった。
人数は少ないが3人とも常連だったので、「いいっしょー?」
もちろん異存はなかったが、僕は新入りのくせにある人を連れて行きたくてうずうず
していた。
それは僕のサークルの先輩で僕のオカルト道の師匠であり、霊媒体質でこそないが
いわゆる「見える」人だった。
この人の凄さに心酔しつつあった僕はオフのメンバーに自慢したかったのだ。
しかし師匠に行こうと口説いても頑として首を縦に振らない。
めんどくさい。ばかばかしい。子守りなんぞできん。

僕はなんとか説得しようと詳しい説明をしていたら、kokoさんの名前を出した所で師匠の態度が変わった。

29 名前:降霊実験  2/9 投稿日:03/05/10 00:14
「やめとけ」というのである。
なぜですか、と驚くと「怖い目にあうぞ」
口振りからすると知っている人のようだったが、こっちは怖い目にあいたくて参加するのである。
「まあ、とにかく俺は行かん。何が起きてもしらんが、行きたきゃ行け」
師匠はそれ以上なにも教えてくれなかったが、師匠のお墨付きという、思わぬ所からのオフの楽しみが出てきた。

当日市内のファミレスで待ち合わせをした。
そこで夕食を食べながらオカルト談義に花を咲かせ、いい時間になったら会場であるkokoさんのマンションに移動という段取りだった。

kokoさんは綺麗な人だったが、抑揚のないしゃべり方といい気味の悪い印象をうけた。
みかっちさんはよく喋る女性で、kokoさんは時々それに相槌をこっくり打つという感じだ。

驚いたことに2人とも僕の大学の先輩だった。
「キョースケはバイトあるから、あとで直接ウチにくるよ」とkokoさんがいった。
僕はなんとなく恋人どうしなのかなあ、と思った。

そして夜の11時を回るころみかっちさんの車で3人でマンションに向かった。

30 名前:降霊実験  3/9 投稿日:03/05/10 00:14
京介さんからさらに遅れるという連絡が入り、もう始めようということになった。
僕は俄然ドキドキしはじめた。
kokoさんはマンションの一室を完全に目張りし、一切の光が入らないようにしていた。
こっくりさんなら何度もやったけれど、こんな本格的なものははじめてだ。
交霊実験ともいうが、降霊実験とはつまり霊を人体に降ろすのである。
真っ暗な部屋にはいると、ポッと蝋燭の火が灯った。
「では始めます」
kokoさんの表情から一切の感情らしきものが消えた。

「今日は初めての人がいるので説明しておきますが、これから何が起こっても決して騒がず、心を平静に保ってください。心の乱れは必ず良くない結果を招きます」
kokoさんは淡々と喋った。みかっちさんも押し黙っている。

僕は内心の不安を隠そうと、こっくりさんのノリで
「窓は開けなくてもいいんですか?」と言ってみた。
kokoさんは能面のような顔で僕を睨むと囁いた。
「窓は霊体にとって結界ではありません。通りぬけることを妨げることはないのです。
 しかしこれから行なうことは私の体を檻にすること。うまく閉じこめられればいいのですが、万が一・・・・」
そこで口をつぐんだ。僕はやりかえされたわけだ。

逃げ出したくなるくらい心臓が鳴り出した。
しかしもう後戻りはできない。
降霊実験が始まった。

31 名前:降霊実験  4/9 投稿日:03/05/10 00:15
僕は言われるままに目を閉じた。
蝋燭の火が赤くぼんやりと瞼にうつっている。
どこからともなくkokoさんの声が聞こえる。
「・・・ここはあなたの部屋です。見覚えのある天井。窓の外の景色。
 ・・・さあ起き上がってみてください。伸びをして、立つ。
 ・・・すると視界が高くなりました。あたりを見まわします。

 ・・・扉が目に入りました。あなたは部屋の外に出ようとしています」
これは。
あれではないだろうか。目をつぶって頭の中で自分の家を巡るという。
そしてその途中でもしも・・・という心理ゲームだ。
始める直前にkokoさんがいった言葉が頭をかすめた。
『普通は霊媒に降りた後、残りの人が質問をするという形式です。
 しかし私のやりかたでは、あなた方にも<直接>会ってもらいます』

僕は事態を飲みこめた。恐怖心は最高潮だったが、こんな機会はめったにない。
鎮まれ心臓。鎮まれ心臓。
僕はイメージの中へ没頭していった。

32 名前:降霊実験  5/9 投稿日:03/05/10 00:15
く。
という変な声がしてkokoさんが体を震わせる気配があった。
「手を繋いでください。輪に」
目を閉じたまま手探りで僕らは手を繋いだ。
フッという音とともに蝋燭の火照りが瞼から消え、完全な暗闇が降りてきた。
かすかな声がする。
「・・・あなたは部屋をでます。廊下でしょうか。キッチンでしょうか。
 いつもと変わりない、見なれた光景です。あなたは十分見まわしたあと、次の扉を探します・・・」
僕はイメージのなかで下宿ではなく、実家の自室にいた。
すべてがリアルに思い描ける。

廊下を進み、両親の寝室を開けた。
窓から光が射し込んでいる。畳に照り返して僕は目を細める。
僕は階段を降り始めた。キシキシ軋む音。手すりの感触。
すぐ左手に襖がある。客間だ。いつも雨戸を降ろし、昼間でも暗い。

僕は子供の頃ここが苦手だった。
かすかな声がする。
「・・・あなたは歩きながら探します。
 ・・・いつもと違うところはないか。
 ・・・いつもと違うところはないか」
いつもと違うところはないか。僕は客間の電気をつけた。
真ん中の畳の上に切り取られた手首がおちていた。

33 名前:降霊実験  6/9 投稿日:03/05/10 00:16
僕は息を飲んだ。
人間の右手首。切り口から血が滴って畳を黒く染めていた。
この部屋にいてはいけない。
僕は踵を返して部屋を飛び出した。
廊下を突っ切り、1階の居間に飛びこんだ。
ダイニングのテーブルの上に足首がころがっていた。
僕はあとずさる。
まずい。失敗だ。この霊は、やばい。
もう限界だ。僕は目を明けようとした。
開かなかった。僕は叫んだ。
「出してくれ!」
だがその声は誰もいない居間に響くだけだった。
僕は走った。家の勝手口に僕の靴があった。 
履く余裕もなく、ドアをひねる。だが押そうが引こうが開かない。

「出してくれ!」
ドアを両手で激しく叩いた。
どこからともなくかすかな声がする。
しかしそれはもう聞き取れない。
僕は玄関の方へ走った。途中で何かにつまずいて転んだ。

痛い。痛い。本当に痛い。
つまづいたものをよく見ると、両手足のない人間の胴体だった。

34 名前:降霊実験  7/9 投稿日:03/05/10 00:16
玄関の扉の郵便受けがカタンと開いた。
何かが隙間からでてこようとしていた。
僕はここで死ぬ。そんな予感がした。
そのときチャイムの音が鳴った。

ピンポンピンポンピンポンピンポン
続いてガチャっという音とともに明るい声が聞こえた。
「おーっす! やってるか~」
気がつくと僕は目を開いていた。
暗闇だ。だが、間違いなくここはkokoさんのマンションだ。

「おおい。ここか」
部屋のドアが開き、蛍光灯の眩しい光が射し込んできた。
kokoさんと、みかっちさんの顔も見えた。
「おっと邪魔したか~? スマン、スマン」
助かった。安堵感で手が震えた。

光を背に扉の向こうにいる人が女神に見えた。
その時kokoさんが、邪魔したわと小さく呟いたのが聞こえた。
僕は慌ててkokoさんから手を離した。
僕は全身に嫌な汗をかいていた。

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