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和解

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579 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:19:56 ID:LxBD1hJJ0
今夜はマサさん、キムさんの出てこない話を書きたいと思う。

この話は「傷」と「邪教」の間の話です。
この事件が切っ掛けとなって、俺はアリサと知り合う事となった。

マサさんの所から帰ってきて暫く、俺は職を失って難儀していた。
俺は「後遺症」に悩まされていて、昼間の仕事が出来ないでいた。
「修行」の結果、毎夜、「霊現象」に悩まされて眠ることが出来なかったのだ。
目を覚まして、呼吸を整えて、気を張り巡らせれば簡単に跳ね除けられる。
しかし、一旦ウトウトし出すとあちこちから湧き出してきた「魍魎」が俺の体に纏わり着き体を齧るのだ。
嫌悪感・不快感だけで実害はない。
だが、皮膚の上や下を這い回る蟻走感に全身が覆われるのだ。
想像してもらいたい。
実害がないからと言って、毎夜大量のムカデやゴキブリに素肌を這い回られる事に耐えられるだろうか?
さらに、睡魔に負けて眠ってしまうと最悪だ。
非常に生々しい夢の中で、「痛み」と共に蟲どもに身を喰われるのだ。
食い尽くされるまで目を覚ます事は出来ない。
そして、冷たい汗にびっしょりと濡れて目覚めた時、時計の針は1時間ほどしか進んでいないのだ。
朝、日の出の光を見ると、緊張の糸がぷっつりと切れて、死んだように眠りに落ちる・・・そんな日々が続いていた。

580 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:20:45 ID:LxBD1hJJ0
そんな訳で、俺は昼間眠り、深夜のアルバイトで食い繋いでいた。
しかし、俺の周りでは事故が多発した。
工事現場の警備員をやっていた時には、工事区間の反対側で棒を振っていた同僚の所に暴走車が突っ込んだ。
運送会社で働いた時には、ステージから落下した荷物に潰されて同僚が圧死した。
始めは偶然と思ったが、あるとき、倉庫で働いていた同僚に黒い影が纏わり着いているのを見た。
俺の部屋に湧き出してくるのと同じ「魍魎」だ。
その同僚は、未熟なフォークリフト運転手が崩した荷物に潰され、片足を複雑骨折する重傷を負った。
その時俺は悟った。
俺の周りで起きる事故、それは俺に集ってくる「魍魎」によって引き起こされていたのだ。
これが修行に入る前にマサさんが警告した「一生、霊現象の類から逃れられない体質になる」ということか・・・
俺は絶望で目の前が真っ暗になっていった。

そんな時、俺の元に繋ぎ役のシンさんから連絡があった。
シンさんの紹介の仕事をしないかと言う事だった。
俺は、もう、あの事件の関係者とは接触したくはなかった。
郷里を離れたのもそのためだ。
しかし、このままでは埒が明かない。
俺はシンさんの申し入れを受ける事にした。

581 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:21:37 ID:LxBD1hJJ0
シンさんが俺にコンタクトしてきたのは、共にマサさんの元で修行した友人Pの差し金だった。
Pの母親は俺達が戻って暫くして亡くなった。
重度の鬱病であったPの母親は、Pが自宅に戻ってからというもの、日を追う毎に衰弱していった。
そして、Pも見たのだ。
自分に纏わり着いているのと同じ魍魎が、オモニに纏わり着いているのを。
胃癌を患っている父親も長くはあるまい。
俺が戻ってくれば更に沢山の魍魎を引き寄せるだろう。
Pは1日でも長く父親に生きていて欲しかった。
幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしており、俺にとってもPの父親は「もう一人の親父」と言える存在だった。
俺が郷里に戻れば、俺に引き寄せられた魍魎がPのアボジの命を削るだろう。
今は無事な俺の家族にも魍魎を取り付かせて不幸が及ぶかもしれない。
俺は二度と郷里には戻るまいと心に決め、シンさんの仕事を始めた。

シンさんの仕事は要するにボディーガードだった。
水商売の女や風俗嬢は、想像以上にストーカー被害を受けやすい職種らしい。
借金の取立てや引き抜きの男・店の女を食い物にしているホストなどをシメたりもしたが、殆どがストーカーからのガードだった。

582 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:22:23 ID:LxBD1hJJ0
ストーカー規制法がまだなかった頃、警察は「事件」が起こらなければ全くと言っていい程、この手の問題では動かなかった。
俺の仕事は大繁盛だった。
面白いのは、夜の女たちには「霊感」の持ち主が多い事だった。
勿論、ただの自称霊感持ちの「カマッテちゃん」も多かった。
しかし、水商売でも風俗でも、目立って多くの客を惹き付ける女、太客を何人も掴んでいる女には「本物」も多いのだ。
「きょうこママ」もそんな女・・・いや、オカマの一人だった。
ママは見た目で判るオカマだったが、非常に豪快で魅力的な人物だった。
霊感?の持ち主で、凡そママには隠し事は出来なかった。
その勘の鋭さは、盗聴や尾行でも付けているのでは?と勘繰りたくなるほどだった。
そんなママは、ゲイバーやニューハーフ・パブを3軒ほど経営しており、その何れもが繁盛していた。
売れっ子ニューハーフの子達は性転換済みの子でも、男のマインドを残している子が多い。
逆に、ごく稀に居る本物の女の心を持った子(性同一性障害?)は、殆どの場合、夜の仕事は続かないらしい。
客のニーズに合わなくなって厳しくなる面もあるが、彼女達の心は、普通の女よりもナイーブで傷つき易いのだ。
ニューハーフの子達、特に売れっ子達は接客業のプロとして理想の女を演じているのだが、勘違いする客は「女」の場合よりも多い。
そして、ストーカー男は、彼女達を「女」より一段低く見て、その行動は悪質かつ卑劣にエスカレートしやすいのだ。
以前にも、ママの店の子をガードした事はあった。
しかし今回は少し違っていた。
ガードの対象は以前ママの店で働いていた事のある、今は昼間の仕事に就いている「女」だった。
それがアリサだった。

583 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:23:19 ID:LxBD1hJJ0
ママは俺に「あなたの悩みも解決するかもしれないから、他の仕事をキャンセルしてでも請けなさい」と言った。
初めから断るつもりはなかった。
ビジネスで成功しているママだが、ママは決して銭金の為だけに店をやっているのではない。
店の子や、彼女達と同じ悩みを持つ行き場のない子達の居場所を作るという、利他的な動機も大きいというのが周りの一致した見方だ。
強かな商売人だが、大きな「徳」を持ち合わせた人物なのだ。
俺はママの仕事を請け負った。

俺はママに指定されたある事務所を訪れた。
事務所に入り、そこに居た一人の女性に声を掛けた。
「済みません。橋本さんの紹介で伺った**と申します。星野さんはいらっしゃいますか?」
「私が星野です。少々お待ちいただけますか?」・・・彼女がアリサだった。
俺は応接室に通され、そこで出された珈琲を飲みながら待った。
・・・「彼女」が対象者か・・・少し俺は驚いていた。
ママから「凄く綺麗な子よ」と言われていたが予想以上だった。
透き通るような白い肌をした、ハーフっぽい文句なしの美女だった・・・

584 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:24:11 ID:LxBD1hJJ0
20分程でアリサが応接室に現われた。
どうやら仕事を切り上げて、事務所を閉めたようだ。
アリサが席に着くと、俺は詳しい事情を尋ねた。
アリサは言い難いであろうことも俺に包み隠さずに話した。
きょうこママへの信頼がそうさせるのだろう。
打ち合わせが終った時にはかなり遅い時間となっていた。
席を立とうとした俺にアリサは言った。
「**さんは信用できる方だと思います。最初、お目にかかった時からそれは判りました。
でも、失礼だとは思いますが、貴方が抱えている問題は私よりも辛くて大変だと思いますが・・・
お願いして大丈夫ですか?
ママに私から話して、他の大丈夫な方にお願いしても良いですよ?」
・・・この女、俺が魍魎に纏わり付かれていることが判るのか・・・
それに、この女も何かに纏わり付かれている感じがする・・・そのことも言っているのか?
「いや、大丈夫。是非請け負わせてください。
ママもこの仕事は私の為になると言っていました。
私も貴女を見てそう感じた。やります。任せて下さい」
その日から、俺はアリサのガードを始めた。

585 和解 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/20(火) 02:25:17 ID:LxBD1hJJ0
アリサに付き纏っていたストーカーの方は割りと簡単に捕まった。
二度と近付けないように徹底的に痛めつけるのが俺の流儀だ。
恐怖を植え付けなければその場凌ぎとなり、更にストーカー行為は悪質化する。
「朝鮮式」のヤキを入れられた男は、その後はトラウマから便所の「電球」を見ただけで恐怖に震える事だろう。
まあ、今回のストーカー男はそれでも運がいい。
アリサに危害を加えていたら・・・「電球」ではなく「ポッキー」や「プリッツ」を使っていただろう。
免許証を奪い、勤務先その他の個人情報を吐かせ、写真を撮り、誓約書と300万円の借用書を書かせた。
法的には意味のないものだが、もし、再びアリサの身の周りに姿を出したら借用書をヤクザに回し、ストーカー行為の事実を妻子と職場にばらすと脅した。
当分、まともに喋る事も出来ないであろう男は首をガクガク振りながら従った。

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