後味の悪い話
わんわん烏

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泡坂妻夫の短編「わんわん烏」
※鳥(とり)じゃなくて烏(からす)です。長文ごめん。

主人公は商店の若旦那。
新妻・加代と2人で暮らしている。

ある朝、烏が「カアカア」ではなく
「わんわん」と鳴いているように聞こえたことについて、加代と話をする。
「きっとあの烏は、生まれてから親烏の鳴き声を聞く前に、
 犬のわんわんという鳴き声を聞いて刷り込まれちゃったんだね」と主人公が話すと
「わんわん烏ね」と加代も寂しそうに笑った。

半年前、加代と見合いをした主人公は、
加代のその寂しげな笑顔にも惚れ込んで、一生懸命に口説いた。
純情な主人公にとって、加代は初めて本気で好きになった相手だった。
内気な加代は、家業を手伝うことにも難色を示したが
店に出なくていい、ずっと家にいてくれたらいいという条件で結婚したのだ。

その朝、店に出勤した主人公は、母親や親戚にも
「加代はまだ店に出たがらないのか」とつつかれる。
「そういう約束で結婚したんだから…
 加代が手伝ってもいいと自分からいってくれたら別だけど」となだめるが
商店街の人々もみんな、商家に嫁いだのに手伝わない加代を
よく思っていないことに、主人公は気づく。

加代に自発的に店に出てもらうには、自分のほうに目を向けさせるだけじゃだめだ。
そういえば自分は、加代が昼間に何をして過ごしているのかも知らない。
もっと加代といろんな話をしよう、お互いに理解しあおうと決めて帰宅した主人公。
しかし「私はわんわん烏でした。どうか私のことは忘れて」という書き置きを残して、
加代は姿を消していた。

119 : 2/3 : 2009/08/20(木) 15:03:52 ID:r4AYFEQg0
翌日、加代の父親が主人公の元を訪れた。
加代は主人公が良くしてくれることを感謝していた、
主人公に落ち度はないのでどうかあの馬鹿娘のことは忘れてくれ、と
平謝りする加代の父親に、主人公は説明する。
「わんわん烏」という言葉は、初めに覚えたことは直せないという意味だろう。
やはり内気な加代は、商家には馴染めず負担を感じていたのだろうか…という主人公に対し、
加代の父親は思い切って話し出した。

  わんわん烏というのは、加代が初めて想いを寄せた男のことだろう。
  加代には好きな男がいたが、恋心を伝えることは無かった。
  娘の気持ちを知らない両親の勧めで、主人公と見合いをしたが
  加代に惚れ込んだ主人公を断るだけの強さもなかった。

  しかしその男は、加代が結婚したと聞いて初めて自分の恋心に気づき、
  いてもたってもいられなくなり加代に告白した。
  それを聞いた加代も、「自分の結婚は間違っていた、
  主人公と離婚して男とやり直したい」と加代の両親に訴えたという。
  もちろん両親は激怒し、そんな不誠実なことをするなら親子の縁を切る、と叱ったが
  その説得も加代の心には届かず、加代は男と駆け落ちしてしまった。
  自分達は加代はもう死んだものとあきらめたが
  主人公にはどんなに詫びても詫びきれない…

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