一人暮らし
恐怖郵便

この怖い話は約 8 分で読めます。

どうも、『かんひも』のAです。
これは僕が高校の頃の話です。

『かんひも』に関わって以来、微妙な霊感に目覚めてしまったわけですが、友人たちから、その系統の相談を受けるようになっていました。
まあ、霊感といっても僕の場合ただ見えるだけなので、本当に話を聞くだけなんですが。
それでも中には気のせいだったり、話を聞いてあげるだけで解決したりする場合も多く、以外と役に立っていました。

10月25日
その日の夕方、僕は友人のJに近所の喫茶店に呼び出されました。
Jはサッカー部に所属しており、そのマネージャーのYさんが奇妙なことで苦しんでいるとのことでした。

喫茶店に着くとすでにJとYさんは来ていました。
恥ずかしながら帰宅部で自由を謳歌していた僕は、Jの試合の応援などで何度かYさんとは顔を合わせたことがありました。
Yさんは大きな目をした表情豊かな可愛らしい子で、サッカー部のマスコット的な存在でした。
しかし久しぶりに会うYさんはいつもの明るさは影を潜め、やつれ果てていました。

「すまん、A」

僕の顔を見るとJが心底困り果てた様子で話しかけてきました。

「どうも本気でやばいらしいんだ・・・」

「どうしたの?」

僕はJに頷くとYさんに話しかけました。
Yさんは泣きそうな顔でゆっくりと話し始めました。
ここからは分かりやすいようにYさんから聞いた話をYさん視点でお話しします。

今から1ヶ月ほど前。
9月23日
Yさんは自分のアパートの部屋で夜中に目を覚ましました。
Yさんは高校に通うのに親元から離れて、学校の近くのアパートに一人暮らしをしています。
アパートといってもそこは女性の一人暮らし。
1階には大家さんたちが住み込み、玄関はオートロックというなかなかのアパートです。
もともとは古いアパートなのですが、後からセキュリティ関係を強化してあるようでした。

Yさんがふと時計を見ると、夜の2時45分・・・
妙な時間に起きてしまったものだと、トイレに行こうとベッドを出ました。
すると、玄関の向こうの廊下で何か音がします。

「カッ、コッ、カッ、コッ・・・」

良く聞くと、それは足音のようでした。
革靴や、ハイヒールのような、かかとの硬い靴の音です。

『こんな夜更けに・・・誰か帰ってきたのかしら・・・』

Yさんは、同じ階の誰かが帰ってきたのだと思いました。
眠い目をこすりながら、気を取り直してトイレに行こうとすると

「カッ、コッ、カッ」

足音が、ちょうどYさんの玄関の前あたりで止まりました。

「・・・?」

Yさんは不審に思いながら、息を潜めていました。
すると

「カコンッ」

ポストから何かが投函されました。
このアパートはもともとは古いため、玄関のドアは下部に穴が開いており、そこに郵便が投函される、昔ながらのポストでした。
ポストに投函された『何か』は、そのまま玄関の靴の上に落ちていました。

「郵便・・・です」

ドアの向こうからかぼそい男性の声が聞こえました。
そして、また足音をさせて去っていきました。

『なんだ・・・郵便屋さんか・・・』

Yさんは一瞬、安心しかけたものの、そんなわけがありません。
もう一度時計を確認しました。
2時49分。
間違ってもこんな時間に配達をする郵便局員がいるわけがありません。
Yさんは恐ろしくなり、ベッドに潜り込むと、震えながら朝になるのを待ちました。

朝、ようやく辺りが明るくなってくると、Yさんはベッドから出て、郵便を確認しに行きました。
見ると、普通の官製はがきです。
恐る恐る拾い上げて、あて先を確認してみました。

【○山 ×夫 様】

Yさんはほっとしました。
あて先が自分宛でないことに、まずは安心したのです。
そして、手紙をひっくり返して文面の方を確認しました。

「・・・!」

Yさんは、心臓がすくみ上がるのを感じました。
はがきの縁が、1センチくらいの幅で、黒く縁取られていました。
そして、空白が大部分を占める中、真中に無機質なパソコンの字で1行だけ

【9月27日 19時31分 死亡】

とだけ記されていました。
Yさんは、誰かのたちの悪い悪戯だと思い、そのはがきを捨ててしまいました。
そして、Yさんはそのままはがきのことなど忘れて、普通に生活を送っていました。
9月の27日も、別段なにごともなく過ぎていきました。

9月28日
その日は休日で、Yさんは友達とファミレスで昼食を取っていました。
今度の休みの計画や、好きな歌手のライブの話しなど、いつものように、話しは弾んで楽しいランチのひと時でした。

「・・・・!」

Yさんは、友達と話しながら、見るとはなしに見ていたテレビの画面に、信じられないものを見つけました。

「・・・昨晩午後7時30分ごろ、××市に住む・・・○山 ×夫さん、3○才が、自宅で死んでいるのが発見されました・・・死因は・・・警察では事件と事故の・・・ 」

それは、まさしくあのはがきに記入された名前でした。
Yさんは恐ろしくなり、慌てて家に帰りました。
はがきの名前を確認するためです。

家に着くなりYさんは、玄関の隅に置いておいたごみ袋の中を探してみました。
あのはがきが来てから、まだごみは出していないので、この袋の中にあるはずなのに、全く見当たりませんでした。
でも、あれは間違いなく、あのはがきに書いてあった名前だったのです。

「う~ん・・・」

話しを聞き終わって、僕は思わずうなってしまいました。

「まあ、でも、その後はなんともないんでしょ?」

僕が口を開くと、Jが首を振りました。

J「それだけじゃ、ないんだって。それから、もう4回・・・同じことがあったって・・・もう、5人、死んでるって・・・」

僕「でも、それだったら、変質者か、悪質ないたずらじゃないの?警察に行った方がいいんじゃない?下手したら、殺人犯からとかってことも・・・」

僕とJが話すのを黙って聞いていたYさんが

Y「違うの。だって、みんな、死に方が違うの。調べてみたけど、心臓麻痺の人や、交通事故の人、病気の人。殺されたとかじゃないし、みんな住んでるところがバラバラなの」

僕は途方に暮れてしまいました。
今まで、そんな例は見たことも聞いたこともありません。

J「それに、ゆっくりもしてられないんだ・・・」

Jはそう言うと、Yさんに目配せをしました。
Yさんは、少しためらうと、バックから何かを取り出しました。

「・・・・!」

それを見た瞬間、僕の背中にひやっとした感覚が通りました。
いつもの、いやな感覚です。
今までそこのバックに入ってたのに、何故気が付かなかったのか、というほどの、いやな感覚。
それは、縁を黒く塗られたはがきでした。

【10月26日 2時00分 死亡】

と書かれていました。

「まさか・・・」

僕が聞くと、Yさんは頷いて、はがきの宛名面を出しました。

【K○ Y子 様】

宛名には、Yさんの名前が書かれていました。

「このはがきだけは、消えないの・・・他のはがきはみんな、どこかに行っちゃうのに、このはがきだけはずっとあるの・・・」

Yさんは、震える声でそう言いました。

「いつ来たの!?」

僕は、そのはがきのいやな感覚に、思わず声を荒げてしまいました。

Y「おとといの、夜・・・」

僕「なんで、もっと早く相談しなかったの!?こいつは、本物だよ!」

J「A!、A!ちょ、声が大きい」

僕の声に、周りがこちらに注目しているのが分かりました。
僕は中年のおっさんみたいに机にあった手拭で額を拭き

『・・・落ち着け、落ち着け・・・』

深呼吸をすると、どうすべきか考えました。
僕には、霊をどうこうする力なんてありません。
警察に行っても、まともに取り合ってもらえる内容でもないし、警察でどうこうできる内容でもありません。
しかし、話しの流れから、なにもしなければYさんは今夜、2時になにかしらの理由で死んでしまいます。

「ちょっと、待ってて」

僕はJとYさんにそう言うと、喫茶店から外に出ました。
こんな時に頼りになるのは一人しかいません。
携帯を取り出すと僕は爺ちゃんに電話し、今までのいきさつを話しました。

僕「・・・というわけなんだ。どうしよう、爺ちゃん!」

爺「ふ~む、そりゃいかんわなあ」

爺ちゃんはしばらく何か考えるように黙りこくった後

爺「あれじゃ、前に大畔(おおぐろ)の坊主に書いてもらったお札があるじゃろ。あれをポストとドアのノブ、部屋の窓という窓に貼るんじゃ。たぶんそいつは招かれ神の類じゃ。中から招かんかぎり悪さはできんはずじゃ」

僕「夜中、部屋に戻らないようにしてもダメ?」

爺「だめじゃな。外じゃ余計にいかん。四角く封ずる門がないぶん連れいかれ放題じゃ」

僕はJとYさんに先にYさんの部屋に戻るように言い、僕の家にお札を取りに戻りました。

大畔の坊さんというのは、『かんひも』の時に僕とKを祓ってくれた坊さんです。
普段は酒飲みで肉も食べるわ、嫁がいてバツイチだわ、生臭さがプンプンする坊主ですが、霊験はあらたかなようです。
僕が変なモノを見るようになってから魔よけのお札を書いて送ってくれていました。
僕は札を取ると教えられたYさんのアパートへ向かいました。
時刻は夜の8時でした

部屋に入ると青ざめたYさんとKが待っていました。
僕は爺ちゃんに教えられた通り、部屋中の窓と玄関のドアノブに札を貼りました。
そして落ち着かないまま3人で時間を待ちました。

緊張していたせいか、時間がたつのはあっという間でした。
時計の針は1時55分を指していました。

「・・・!」

一番最初に異変気付いたのはYさんでした。

「来た!!」

震えながらYさんは自分のベッドに潜り込みました。

「・・・カッ、コッ、カッ、コッ・・・」

足音です。
同時に僕の背中に冷たい電流が走りました。
ものすごく嫌な感じがします。

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